青少年赤十字(JRC)活動は、学校教育と連携し、子どもたちの成長を支援する上で、重要な役割を担っています。JRC活動の目標と学校教育の目標は、根底にある理念を共有しており、相互に補完し合う関係にあります。本章では、JRC活動の目標と学校教育の目標の関連性について、詳細に考察します。
JRC活動は、赤十字の理念に基づき、「健康・安全」「奉仕」「国際理解・親善」の3つの実践目標と、「気づき、考え、実行する」という態度目標を掲げています。これらの目標は、学校教育が目指す「生きる力」の育成と深く関連しています。
文部科学省は、「生きる力」を「変化の激しい社会を生き抜くために必要な、知・徳・体のバランスのとれた力」と定義しています。具体的には、
JRCは、「子どもたちが人道的価値観を身につけ、地域社会や国際社会に貢献できる人間へと成長すること」を目的としています。
JRCの理念は、赤十字の7原則(人道、公平、中立、独立、奉仕、単一、世界性)に基づいています。これらの原則は、人間の尊厳を尊重し、すべての人々が平等に扱われるべきであるという、普遍的な価値観を体現しています。
JRCの目的と理念は、「生きる力」の育成と以下のように関連しています。
ア.基礎的・基本的な知識・技能の習得:
JRCの活動を通して、子どもたちは、健康・安全、応急手当、防災、国際協力など、社会生活に必要な知識や技能を習得します。
イ.思考力・判断力・表現力等の育成:
JRCの活動は、子どもたちが自ら課題を発見し、解決策を考え、実行する機会を提供します。このプロセスを通して、子どもたちは、思考力、判断力、表現力などを総合的に育成することができます。
ウ.主体的に学習に取り組む態度の育成:
JRCの活動は、子どもたちの自主性・自律性を尊重し、主体的な学習を促します。
エ.多様な人々と協働する態度の育成:
JRCの活動は、グループで活動することが多く、他者と協力して課題に取り組む経験を通して、協調性やコミュニケーション能力を養います。
オ.自己の生き方を考える力の育成:
JRCの活動を通して、子どもたちは、社会貢献の意義や、自分の将来について考え、主体的に進路を選択する力を養います。
JRCの指導方法の特徴である「先見」と「待ちの姿勢」は、学校教育においても、子どもたちの主体性を育む上で、非常に有効な視点となります。
「先見」とは、先を見通して考え、行動することです。JRCでは、「5分前行動」や「注意深い生活態度」などを通して、子どもたちに「先見」の重要性を伝えています。
学校教育においても、「先見」の重要性は増しています。変化の激しい現代社会では、将来を予測し、変化に対応できる能力が求められています。
ア.キャリア教育:
将来の職業や社会の変化について考え、自分の進路を主体的に選択する力を養います。
イ.問題解決学習:
社会の課題について考え、解決策を提案する力を養います。
ウ.防災教育:
災害の危険性を予測し、適切な行動をとる力を養います。
「待ちの姿勢」とは、子どもたちが自ら考え、行動するのを辛抱強く見守り、必要な時に適切なサポートを行うことです。
学校教育においても、「待ちの姿勢」は、子どもたちの主体性を育む上で、非常に重要です。教師がすぐに答えを教えたり、手助けをしたりするのではなく、子どもたちが自分で考え、解決する機会を与えることが大切です。
ア.問いかけ:
子どもたちに「なぜだろう?」「どうしてこうなるんだろう?」といった問いかけを通して、思考を促します。
イ.ヒントを与える:
直接的な答えを教えるのではなく、ヒントを与え、子どもたちが自分で答えを見つけられるように導きます。
ウ.励ます:
子どもたちの努力を認め、励ますことで、自信を持たせます。
エ.失敗を許容する:
失敗を恐れずに挑戦させ、失敗から学ぶ機会を提供します。
JRCのスローガンは、子どもたちにJRCの理念や活動目標を分かりやすく伝え、活動への意欲を高める上で、効果的です。学校教育においても、JRCのスローガンを参考に、子どもたちの心に響くスローガンを作成し、活用することができます。
JRCには、以下のようなスローガンがあります。
学校や学級で、子どもたちの意見を取り入れながら、オリジナルのスローガンを作成します。
作成したスローガンを教室や廊下などに掲示し、子どもたちが常に意識できるようにします。
スローガンに基づいた具体的な活動を企画・実施します。
JRCの活動は、学校教育における様々な教育手法と組み合わせることで、より大きな教育効果を生み出すことができます。
JRCの活動は、体験学習と非常に相性が良いです。例えば、
ア.救急法講習:
実際に人形を使って心肺蘇生法を体験する。
イ.地域清掃:
実際に地域を清掃し、地域社会への貢献を体験する。
ウ.国際交流:
海外のJRCメンバーと交流し、異文化を体験する。
JRCの活動テーマは、問題解決学習の題材として最適です。例えば、
ア.地域の防災マップ作成:
地域の危険箇所を調査し、防災マップを作成する。
イ.高齢者のための健康体操教室の企画・運営:
高齢者の健康増進に役立つ体操教室を企画・運営する。
ウ.フェアトレード商品の販売促進:
フェアトレード商品の販売促進のためのキャンペーンを企画・実施する。
JRCの活動は、グループで活動することが多く、協同学習と組み合わせることで、より大きな効果を発揮します。例えば、
ア.グループでの調査・研究:
JRCの活動テーマについて、グループで調査・研究を行う。
イ.グループでの発表:
調査・研究の結果を、グループで発表する。
ウ.グループでの活動:
JRCの活動を、グループで協力して行う。
まとめ:JRC活動と学校教育の連携による教育効果の最大化
JRC活動の目標と学校教育の目標は、根底にある理念を共有しており、相互に補完し合う関係にあります。JRC活動を学校教育に効果的に取り入れることで、子どもたちの「生きる力」を育み、教育活動全体の活性化に貢献することができます。
学校は、JRC活動を積極的に推進し、子どもたちの成長を支援していくことが求められます。